(出所:123RF)

 ある企業の出退勤システムの話だ。その企業では月末月初のデータ提出時に何度も出勤時間を入力し直す人が続出した。「確定ボタン」を押そうとして「取り消しボタン」を押してしまったというのだ。押し間違いの原因を調べたところ、確定ボタンのすぐ上方に確定ボタンよりも目立つ色で取り消しボタンが配置してあった。

 なぜこのようなUI(ユーザーインターフェース)デザインになったのだろうか。仮に社內システムではなく、EC(電子商取引)サイトやチケットの予約システムといった消費者向けWebサービスが同様のUIデザインだったらどうだろうか。注文內容を決め、氏名や住所といった必要な情報を全て入力し、いざ購入ボタンを押そうとしたら、実はそれがキャンセルボタンで、これまで數分かけた入力作業が無駄になるといった具合だ。

 よほど欲しい商品やサービスでなければ、もう一度必要な情報を入力しようと思わないのではないだろうか。人気のあるチケットや商品で、再入力しようとしたら既に売り切れだったらどんな不満を持つだろうか。こうした事態を避けるため、消費者向けのWebサービスのUIデザインは使いやすく設計されているケースが多い。チェックボックス式を導入して入力數を減らしたり、ガイドを出して入力ミスを削減したりするような工夫もある。

 ところが、社員しか使わない前提の社內システムは使いやすさを考慮したUIデザインが少ない。「予算が限られるなか、機能の開発を優先してUIデザインまで費用をかけられないプロジェクトは多い」。NTTデータの古澤暁子 公共?社會基盤事業推進部 プロジェクト推進統括部 技術戦略擔當 シニア?エキスパートは実情をこう明かす。

ちりも積もれば山となる

 社內システムのUIは使いにくいままでいいのだろうか。使いにくいシステムを放置しているなら働き方改革は本末転倒であり、いっそ諦めたほうがよいのでは――。UIデザインの記事を執筆するためにUIデザイン擔當者に取材をするなかで、こう強く思うようになった。特に多くのデザイン擔當者が指摘したのが、「使いにくいシステムは社員の生産性を低下させている」という當たり前だが見過ごされてきた事実だ。働き方改革が経営課題となった今、社內システムのUIデザインを考え直す機會が來ている。

 仮に1000人の社員がいる企業で、毎月使う出退勤システムの入力に各社員が5分間手間取ったとしよう。すると毎月5000分で約83時間、年間だと約996時間、つまり1000時間近くを無駄にしている計算になる。この1000時間の無駄を削減できたら、経営にとってのインパクトは少なくない。ちりも積もれば山となるのだ。

 冒頭の例でいえば、取り消しボタンと確定ボタンの位置を入れ替え、確定ボタンの色を目立たせるだけで、押し間違いが減って使いやすさはぐっと上がる。ボタンの位置と色の変更であれば數十萬円の修正費用で済むだろう。同じ額かそれ以上の投資となるRPA(ロボティック?プロセス?オートメーション)導入を考える前にUIのちょっとした改善に取り組むべきではないだろうか。

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